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金出武雄の「問題解決の7か条」

■第8回■(最終回)
「金出理論」による英会話の上達と役立ち度


【2007.01.08】

以下の図は、「金出理論」による英会話の上達度と、その役立ち度の関係を表したものである。
横軸は上手さ加減。縦軸は役立ち加減の座標軸である。

「金出理論」による英会話の上達度と、その役立ち度の関係


普通に考えると、上手なほど役立つからグラフは単調に45度の右上がりの直線になると思われるが、私に言わせると違う。役立ち方は最初に山があって、次の谷を越えてから単調に増加する。
最初は、45度より高くなる。つまり、自分の実力以上に役立つのだ。それは相手からかわいいと思われるからである。
外国人から「アナタハ、ワタシ、ニホンゴ、スキヤキ、ウマイ」など、たどたどしい日本語でしゃべられると微笑ましく思うものである。そこであなたも外国人に分かるようにゆっくり話して上げる。
そんなとき「アナタ、バカデスカ」と言われても腹は立たないものだ。つまりA段階では、相手の言うことも分かりやすいし、まずいことを言っても間違いと許されるわけである。

その後だんだんと上手になって、コミュニケーションができるようになる。では、山を越えるぐらい(M)に英会話の力が上達すると、相手の反応はどうなるか。
「こいつ、かなりできるな」となると相手は普通のスピードでしゃべりはじめる。難しい言葉も遠慮なく使い始める。そうなるとこちらはそこまで上手ではないので、うまく聞き取ることができない。
相手は「理解していないなあ」といらいらする。失礼なことを言うと本気で腹を立ててしまう。危険な谷に向かっている。
MからVの間は、上手になればなるほど、実は効果がマイナスなのだ。

学会などでアメリカに来る人たちの英会話は、最初の山を越えるか越えないかというぐらいの人が多い。しかし、中にはもっと上手であるがちょうど谷の底Vに位置している人がいる。そういう人たちが一番危険で、横で聞いているとハラハラしてしまう。
そういう人は英語をしゃべることに自信を持っている。ほとんどの単語は正しく使われ、難しいことも言う。聞いているアメリカ人からすると、とても上手に聞こえるのである。ところが、そういう人たちにかぎって、相手にものすごく失礼なことを言ってしまう。アメリカ人同士の会話だったならば、相手が完全に腹を立てるような言い方、単語やトーンを使ってしまう。

私の考えでは、日本人としての実用英語の習熟レベルは、谷を越えて最初の山と同じ高さ、つまりBの位置ぐらいがのところがコミュニケーションをする会話力として最適かと思われる。

Bの点まで到達するのもなかなか大変であるが、それ以上目指すのは無駄である。その時間があったら、自分の分野の本でも読んだ方が合理的である。


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■金出武雄プロフィール
カーネギーメロン大学(CMU)教授。前同大学ロボティックス研究所長(92〜2001年)。人工知能、コンピュータビジョン、ロボット工学の世界的権威。
現在は、知的システムの障害を持つ人が独立して生活できるのに貢献させる方法を研究する生活の質工学研究センターを今年度新しく設立し所長に。また、独立行政法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センターセンター長(非常勤)を兼務し、日本とアメリカとの間を忙しく往復している。
1945年、兵庫県生まれ。京都大学電子工学科、同大学院博士課程修了。同大学助教授を経て80年、米国カーネギーメロン大学計算機科学科・ロボット研究所に招聘される。工学博士。アメリカ工学アカデミー特別会員、アメリカ芸術科学アカデミー会員。C&C賞、FIT業績賞、エンゲルバーガー賞など受賞多数。

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